インシデント、医療安全の基礎

医療安全

インシデントを起して悩んでいる人

 

”インシデントを起こして、師長さんにめちゃくちゃ怒られた”

”やる気がでない・・・”

”インシデントとか医療安全のこと良くわからない。どうしたらいんだろう・・・。”勉強したいけど、調べても難しくてわかりません。簡単に教えて下さい。

そんな悩みに答えます!

自己紹介

私は、看護師長・医療安全管理者として働いてきました。そこで得た知識と経験をお伝えします。

詳しい内容を求めている方は、他のサイトを参照してくださいね。

☑️  本記事のテーマ

インシデント・医療安全についての基礎知識を復習

医療安全ついての用語の意味

【ヒューマンエラー】

人がおかす間違いを、学問的にはヒューマンエラーといいます。

ヒューマンエラー=「意図しない結果を生じる人間の行為」です。

エラーの定義を看護現場にあてはめると、するべき行為を忘れたり、間違いや不適切な行為をすることを意味します。

【インシデント】

インシデント = ヒヤリ・ハット (厚生労働省)

日常診療の場で、誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの。あるいは誤った医療行為などが実施されたが、結果として患者に悪影響を及ぼすに至らなかったもの。

*国・医療機関でインシデント、アクシデントの捉え方が違いますが、考え方は同じです。米国医療機関は、医療事故を「インシデント」と表現。

インシデント、ヒヤリ・ハット、ニアミス、アクシデントなど病院によって違います。国際的な統一見解がないのが現状です。

厚生労働省報告の定義

医療事故=アクシデント 医療事故になる可能性のあったもの=インシデント

  • インシデント = ヒヤリ・ハット  

(レベル0~3a)

業務中に ひとつ間違えたら事故になりそうな「ヒヤリ」としたり「ハッ」とした経験

  • アクシデント = 医療事故

(レベル3b~5)

医療施設(病院など)で発生する人身事故 医療行為と直接関係ないもの(転倒など)、患者だけでなく、職員の被害も含みます。

【インシデント報告の目的】

インシデントの再発防止や、医療事故・医療過誤の発生を未然に防止することを目的に収集され、報告者の責任を問うものではありません。

全職員対象に些細なことでも良いから、院内で何か問題点を見つけたり、ヒヤリを経験した場合に文書で報告して、情報を共有し、今後の予防に役立てるシステムです。

Point!

事実を確認しているだけで、インシデント当事者は責められている気持ちになります。チーム全体が、個人を責めないという気持ちを持つことが大切です。師長さんやリーダー看護師さんは、そのことを常に念頭に置きインシデントの対応をしてください。

報告書が責められることがないようにすることが重要です

 

【医療事故】

医療に関わる場所で医療の全過程において発生するすべての事故をいい、医療従事者の過誤、過失の有無は問わない」と定義されています。

*医療者が被害者の場合や、患者が廊下で転倒した場合も含まれます。

【医療過誤】

医療事故の発生の原因に、医療機関・医療従事者の過失のあるものをいいます。

Point!

医療事故のすべてが医療過誤ではありません。医療事故の中には医療従事者の不注意以外の原因が含まれるからです。

※過失:行為の違反性、客観的注意義務違反を言いいます。注意義務は、結果発生予見義務と結果発生注意義務に分けられます。

すべての医療事故の発見を予見し、回避することはできません。新人看護師とエキスパート看護師のような能力の差などによって、予見し回避できる能力は異なります。

注意義務違反をしているかどうかの判断基準は、その時代の医療や看護の水準が用いられます。

Point!

✔過失を簡単に言えば、

「してはならないことをした事故」

「するべきことをしなかった事故」です。

 

【テクニカルスキル】

職務遂行能力ともいわれています。職務を遂行する上で必要となる専門的知識や、業務処理能力です。

*看護師なら看護技術、レーサーなら運転技術といった技術そのものを指します。

【ノンテクニカルスキル】

専門的技術以外の能力を指します。状況認識力、コミュニケーション力、リーダーシップ、企画力など、職務を遂行する現場において必要なあらゆる技術の総称です。

3年目以上の看護師や医療安全担当者は、このノンテクニカルスキルの重要度が増し、スキルを求められます。

【医療安全とチーム医療】

医療安全活動

  1. 安全を脅かしている脅威をなくしていく
  2. リスク要因を管理・コントロールする
  3. リスクを洗い出し、評価し、安全対策を実施していく活動

この3つをチームで行う、チーム医療を推進することが医療安全です。

チーム医療とは 

「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、高い専門性を発揮し、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と定義されています。(厚生労働省)

 

【リスク管理の定義】

「事故や危険がなるべく起こらないように対処すること、および事故や危機的な状況が発生した後に対応する行動」

【リスク管理の目的】

「事故防止活動を通して組織の損失を最小限に抑え、医療の質を保証すること」

【リスクの評価】

事故の大きさ(被害の程度)✖︎  事故発生頻度(発生確率)で計算できる。

事故の大きさ事故発生頻度
1:軽微な支障0:起こりえない
2:軽微な問題1:ほとんどなし
3:中等度の問題2:たまにある
4:大きな問題3:頻繁にある

 

ヒューマンエラー

【ヒューマンエラーとは】

ヒューマンエラー=「意図しない結果を生じる人間の行為」でしたね。

これを少し詳しく解説します。

看護師さんは、エラーを意図的に行っていません。多重業務を抱えながら一生懸命働いている中で、意図せずエラーが発生してしまうんです。

意図しない結果がなぜ発生するのか?

Point!

ちょっと難しいけど重要。

人間の行動を心理学から考えみるとわかります。

ヒューマンエラーのメカニズム

心理学者レヴィン(Lewin)の行動の法則

B=f(P,E)  

B:Behavior(行動)

P:Person(人)

E:Environment(環境)

F:Function (関数という意味なので気にしない)

これにあてはめるて考えると、

ヒューマンエラー=人間の行動(B)=結果

人間側の要因(P)=人間の本来持っている特性 (生理・認知・集団的特性)

環境の要因(E)=人間を取り巻く広義の環境(行動的環境)

ヒューマンエラーは、看護師の性格や行動とチームのメンバーや物等の環境によって、意図しない結果が生じたものです。

Point!

人間の性格や特性などは、変えることは難しく、機能低下や生理的特性は変えることはできません。

だから、「人間の行動に大きな影響を与える環境要因」の理解と対策を考えることが重要なんです!

薬のインシデントで考えてみましょう

看護師さんが薬を過剰に内服させてしまったインシデントも、意図して間違えたのではないですよね。看護師さんが実施した時は、間違っているとは思っていません。

「正しい」と思って実施しているんです。

なぜ「正しい」と判断してしまったのか、なぜなぜ分析して行くことが、対策の糸口に繋がります。この分析手法をImSAFERといいます。

参考文献「河野龍太郎 医療におけるヒューマンエラー 第2版 医学書院」

【オカレンス報告】

診療計画および看護計画などで予定していたこと以外の事象が発生した場合、あらかじめ定められた基準に従って、その事例を報告する仕組みとしてオカレンス報告制度があります。

「退院して24 時間以内の再入院の事例」などを報告することで、医療事故として取り扱われない事象を検討することが可能になる。

 

インシデント分析

【分析の目的】

再発防止、拡大防止、発生の防止、未然に防ぐ。

類似事故が発生して被害が拡大しないようにする。

インシデントは常に重大事故に結び付く可能性があり、問題事象の背後要因を明らかにし、顕著事象になる前に対策を講じるため。

【分析を行う基本的な考え方】

1)分析の優先順位を付け、再発防止を目的として行う

  • 発生すると患者への影響が大きい事例
  • 発生頻度の高い事例
  • 他の事例の再発予防として共有できる可能性の高い事例
  • 自施設の課題に関連している事例
  • 多職種が関与している事例

2)詳細な事実を把握するためには重要なこと

  • 責任追及でなく「対策指向型」に徹する
  • 事情聴取でなく協力要請の雰囲気を醸成する
  • 先入観を排除し、客観的事実から探求する
  • 事実を感情論などで否定しない
  • 当事者思い出す事情、環境などすべて記録する
  • 通常から逸脱した行動、判断などを抽出する
  • 何故起こったか」に注目する
  • 調査内容正確にできるだけ詳しく記録する
  • タイムリーに行う!
  • 多職種で多角的に分析する!

Point!

事実の把握が一番重要です。

事実を文章ではなく、時系列で事象を関連図のように可視化すること。

何が、どのように起こったのかを視覚的に理解することで、問題点がよくわかるようになります。

看護学校の時に書いた、病態関連図みたいなものです。

【分析方法】

・定量分析

組織内のインシデントの件数を、内容別、職種別、発生時間などで集計し、その組織におけるインシデントの傾向を把握することで、傾向に応じた対策を立案できる。

・定性分析(要因分析:P-mSHELL、RCA分析、ImSAFER)

エラー発生の根底にある背景を知り、環境と人間における要因を探り当て、発生防止、再発予防に役立つ。

Point!

定量分析だけでは傾向はつかめても、事故防止には役立たちません。

地道な要因分析こそ重要です。

定性分析(要因分析) 看護師ならこれぐらい知っておこう!

1.フレームワーク型の分析手法 

(1)4M4E

(2)SHELL(P-mSHELL)モデル

2.時系列で分析する方法 

(3)RCA(Root Cause Analysis)根本原因分析

(4)ImSAFER:MedicalSAFERにを改良したもの(Improvement を追加)

(RCAの1つ)河野龍太郎氏考案

Point!

どれを使えば良いのかわかりませんよね。

私の病院では、簡易分析を行う時は、フレームワーク型の(2)P-mSHELLモデルで行います。インシデントの内容によって詳細に分析が必要な場合は、

(4)ImSAFER分析を行っています。

RCA? P‐mSHELL? ImSAFER?

RCAとは!

米国退役軍人病院の患者安全センターで開発された手法です。

出来事を「なぜ?なぜ?」と掘り下げて考えていくのが特徴です。

P‐mSHELLとは!

河野氏が,ヒューマンエラー分析モデルである SHELLモデルにmanagement(m:管理)とpatient(P:患者)の構成要素を加えて医療用に提案したもです。

Software(S:ソフトウェア)

Hardware(H:ハードウェア)

Environment(環境)

Liveware(L:当事者)

Liveware(L:当事者以外)

この項目に、インシデントの事実を当てはめ分析します。

ImSAFERとは!

Improvement for medical System by Analyzing Fault root in human ERror  incident  の略)

自治医科大学医学部医療安全学教授 河野龍太郎氏が医療向けに開発した分析手法です。

ヒューマンエラーが関係した根本原因分析の一つの手法です。

インシデント対策・実施・評価

【対策案を考えるポイント】

  1. 個人に対する対策ではなく、可能な限り環境を変える対策を考える           「注意や集中」など個人の心理ではなく、エラーを誘発しにくい環境への改善案を考えます。
  2. できるだけ具体的な対策を考える                           「教育訓練する」といった漠然とした対策ではなく、「1週間以内に2時間の輸液ポンプ操作演習を実施する」など、具体的に明記
  3. できるだけ「やめる」よりの対策を考える

*効果の高い対策案を挙げることができる。

4.エラー防止対策の発想手順とP‐mSHELLを組み合わせて検討すると効果的。

【対策案の検討】

集団でアイデアを出すための原則

  • 批判厳禁:けちをつけない
  • 自由奔放:思いつくまま列挙
  • 質より:たくさんのアイデアを
  • 便乗発展:他人のアイデアに便乗してもOK

*実行可能かどうかは別にして、考えられるものはすべて列挙し検討する

【実行可能な対策の決定】

現実の制約条件を考慮し、優先順位をつけて、実際に実施する対策案を決定する。

  • 予算の制約
  • 人材の制約
  • 時間の制約
  • 場所の制約
  • 重要性や影響の大きさ

Point!

残留リスク”を検討する。

対策を導入すると、その効果のみに目を奪われがち、一方で潜在的なリスクを高める場合もある。新しい対策が引き起こす、新しいエラーの可能性を検討。

*実行上の問題点、限界なども考えておく。

【対策決定のポイント】

  • 影響や重要性を第一に考える
  • 別の問題(副作用)が、発生する可能性がないか検討する
  • できるだけ、環境の改善を優先する
  • 長期的な対策と短期的な対策を考える
  • 対策は多面的多重的に考える
  • 優先順位をつける
  • 漠然とした内容でなく具体的な内容

【実施のポイント】

  • 優先順位を決める (できることには限りがある)
  • 試用期間を決める (実際にやってみるとうまくいかないこともある)
  • 評価方法を決める (効果判定を何でするかを予め決めておく)
  • 決めたら守る (効果がないのではなく、実施されていないことがある)           *実施できないなら、理由の検討を行う
  • 効果がないならやめる

【実施した対策の評価】

再発防止のために実施された対策が、的確に実施されたかどうかを確認し、効果と副作用について評価する。

  • エラーが減ったかどうか・・・効果
  • 別の問題が発生していないか・・・副作用

【定量的評価:客観的データの評価】

  • インシデント報告件数が減少したかどうか。実施した対策で効果が出ていれば、同種のインシデント報告件数はゼロに近づく
  • 患者影響レベル別件数も関連して考慮する

【定性的評価:主観的データの評価

報告内容を確認して、質的変化を評価する

  • 現場の作業がやりやすくなった
  • 職場の雰囲気が良くなった(他職種間での情報交換が活発になった等)
  • 0レベルの報告件数の増加
  • 現場の業務改善に関する意見が積極的にでてくるようになった

参考文献「河野龍太郎 医療におけるヒューマンエラー 第2版 医学書院」

安全文化の醸成について

【組織で醸成する安全文化】

安全文化の醸成には時間がかかります。突如生まれるものではありません。地道に取り組むことが重要です。

ジェームズ・リーズンの組織の安全文化

  1. 報告する文化」:潜在的な危険に直接触れる現場が、自らすすんで報告しようとする組織文化
  2. 正義の文化」:安全に関する正しい知識や情報をもとに許容できる行動とできない行動の境界を明確に理解し行動できる文化
  3. 柔軟な文化」:急変時など状況に応じて、指揮命令系統が明確な階層型組織と迅速に対応ができるフラット型組織に組織が柔軟に再構成される文化
  4. 学習する文化」:正しい情報から結論を導き出す意思と能力、大きな改革を実施する意思をもつ文化

* J・リーズン:組織事故 起こるべくして起こる事故からの脱出,日科技連出版社,

【組織で「学習する文化」】

1999 年に米国において、失敗(エラー)が発生したとき、誰の責任なのかを追求するのではなく、何がその人に失敗を起こさせたかを考える。事故などに関して個人の責任追及を行って事態を終息させる文化から、失敗から学び、失敗が発生した要因を解析し、改善を図っていくという「学習する文化」へ転換する。すなわち、医療機関において、報告制度を確立し、潜在的リスクを認知するとともに、事故などが生じた際に個人を責めるのではなく、全ての医療スタッフが学習していくという文化こそ、重要だと考えられるようになった。

参考) 米国医療の質委員会/医学研究所著,L. コーン,J. コリガン,M. ドナルドソン編,医学ジャーナリスト協会訳:人は誰でも間違える−より安全な医療システムを目指して,日本評論社,2000

【安全文化を測る因子】

  • オープンなコミュニケーション
  • エラー後のフィードバック
  • イベントの報告される頻度
  • 仕事の引継ぎや患者の移動
  • 患者安全に対する病院マネジメント支援
  • 過誤に対する非懲罰的対応
  • 組織的- 継続的な改善
  • 安全に関する総合的理解
  • 人員配置
  • 上司の安全に対する態度や行動
  • 部署間でのチームワーク
  • 部署内でのチームワーク

参考) 種田憲一郎,奥村泰之,相澤裕紀他:安全文化を測る―患者安全文化尺度日本語版の作成―,医療の質・安全学会誌,Vol.4 No.1,2009

【安全な医療を提供するための10の要点】 厚生労働省

  1. 根づかせよう安全文化 みんなの努力と活かすシステム
  2. 安全高める患者の参加 対話が深める互いの理解
  3. 共有しよう 私の経験 活用しよう あなたの教訓
  4. 規則と手順 決めて 守って 見直して
  5. 部門の壁を乗り越えて 意見かわせる 職場をつくろう
  6. 先の危険を考えて 要点おさえて しっかり確認
  7. 自分自身の健康管理 医療人の第一歩
  8. 事故予防 技術と工夫も取り入れて
  9. 患者と薬を再確認 用法・用量 気をつけて
  10. 整えよう療養環境 つくりあげよう作業環境

医療安全とチームコミュニケーション

米国の医療機能評価機構が収集した重大事故の約7割に、コミュニケーションの問題があったと報告されています。医療・看護を提供する過程で、必要な情報がチームメンバーに的確に伝達されなっかことが、インシデントを誘発させています。

【医療現場でのチームのコミュニケーショの目的】

  • チームメンバーや患者間で必要な情報を的確に伝達・共有する                                (患者に安全で質の高い医療・看護を提供すること)
  • チームメンバーに気づいたことや疑問に感じたこと                                             (指摘・認識することで、間違いの早期発見や事故の未然防止につなげる)
  • チームメンバー間で日常から意思疎通を図っておくこと                                      (職種および職位の垣根を超えて支援しあえる風土を作る)

【チームに必要な人間関係の9つガイドライン

  1. 個人としての敬意を示そう
  2. 自分が接してほしいと思うように他者に接する
  3. 他者の一番の長所と思う点を探すようにする
  4. 言うに値することがないときは、時になにも言わない
  5. 他者に対してより、まず自分に忠実に
  6. ユーモア感覚を持ち続けること、常にバランスのとれた見方をすること
  7. 協力は努力して得られるものであり、強要するものではない
  8. 人が関心をもつのは、あなたがどれだけの知識をもっているかではない。あなたがその人にどれだけ関心をもつかである
  9. 共感を示す (他者の考えが99%違っても、まずは1%の同じ考えに共感する)

Point!

安全な医療を提供するには、良好な人間関係が重要です。信頼関係を築き、共感を得られるようなコミュニケーションを図ることが大切です。

*ドナルドR.ウッズ PBL 判断能力を高める主体的学習 2010

【後工程はお客様

一つひとつの業務プロセスで、仕事を次のスタッフに受け渡す時は、同僚のスタッフでも「お客様」という思いで仕事を受け渡す。

日勤看護師が夜勤看護に継続的ケアを受け渡す時には、夜勤看護師がわかり易く、やり易いようにバトンタッチできるよう「後工程はお客様の精神で行うこと。

【報告はSBARで】(Situation-Background-Assessment-Recommendation)

患者の状態変化など、緊急の情報を伝達する際に、「状況・ 背景・評価・提案」は最低限伝える。ISBARC用いるところもあります。

  • 報告者と患者の同定(Identify)
  • 状況Situation)
  • 背景Background)
  • アセスメント(Assessment)
  • 提案Recommendation)
  • 復唱確認(Confirm)

Point!

ISBARCとは。「報告者と患者の同定」をより重視するため、以前は「S」に含まれていた「I」を強調する意味であえて別にしている。報告者である自分(Identify)と、復唱確認(Confirm)を強調した「ISBARC」が用いられます。

 医療安全からみた記録の重要性について

【記録の大切さ】

医療安全の視点で、病院の担当弁護士さんから学んだ記録の大切さをお伝えします。

真実性の推定:カルテ・看護記録は最も重要な証拠

医療訴訟において最も重要な証拠となる、カルテ・看護記録には真実性の推定書かれていることはなされているであろう。書かれていないことはなされていないであろう)が働く、ということです。カルテ・看護記録は、診療行為の都度、経時的に時を追って作成されるものであるから、記載どおりの事実が存在したことが推定され、逆に、記載の欠落はそのような事実は存在しなかったであろうと推定されるということです。

要は、実施した看護を記録していれば実施したと信じるけど、記録してなければ、実施してなかったと思われる、と言うことです。

【医療事故発生時は経時的記録

  • 事故発生前後の状況を詳細に記載し、実施した応急処置、その後の検査、治療の内容と結果、患者・家族への説明の内容についても記載する。
  • 診療録等(看護記録、検査記録等を含む)には経過を正確に記載し、追加記入を行う場合は記入日時を明記する。ただし、過去の記録の行間に追加記入は行わないこと。主治医は各記録の確認を行う。
  •  診療記録等の訂正が必要な場合は、訂正者、訂正日時及び、訂正理由を明記し、改ざんを疑わせるような訂正を行ってはならない。

【記録の原則】

  1. 基準時間での記録。                                  院内の時計、電子カルテ、医療機器
  2. 事実のみを客観的かつ簡潔、明瞭、正確に記録する。
  3. 患者家族への説明を記録する。                            いつ、誰が、誰にどのような説明をしたか同席した医療従事者名、患者家族の訴え。
  4. 記録の修正                                      追加の記載は気付いた時点での記録とし、追加、修正の理由も記入しておく。

 

医療対話推進者について

医療対話推進者は、各医療機関の管理者から患者・家族支援体制の調整と対話促進の役割を果たす者として権限が委譲され、管理者の指示に基づき、医療安全管理者、医療各部門、事務関係部門と連携し、組織的に患者・家族からの相談等に対応することを業務とする者です。

【医療対話推進者の業務】

  • 患者・家族支援体制の構築
  • 患者・家族支援体制に関する職員への教育・研修の実施
  • 患者・家族への一次対応としての業務
  • 患者・家族からの相談事例の収集、分析、対策立案、フィードバック、評価
  • 医療事故や、医療事故を疑った患者・家族からの申し出に関して対応すること
  • 説明と対話の文化の醸成

参考) 医療対話仲介者(仮称)の実態把握と役割・能力の明確化に関する研究班:医療対話推進者の業務指針及び養成のための研修プログラム作成指針-説明と対話の文化の醸成のために-,平成24 年度厚生労働科学特別研究事業

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